Message座長のご挨拶

 デジタル化を通じた経済発展の実現や社会的課題の克服は、今や日本の最重要課題です。経済活動の高度化やデータの活用、新たなデジタル市場への対応、地域創生や行政事務の効率化など、課題領域は多岐にわたっています。今や世界のアジェンダである気候変動対応も、これを市場メカニズムの下で進めていくには、温室効果ガス排出量のトラッキングなど、デジタル技術の活用が不可欠です。あらゆる取引が資金決済を伴う中、これらの課題を克服するには、新しいデジタル技術を取り込んだ「プログラマビリティ」を備え、イノベーションやデータ活用を促せるとともに、価値の安定した決済手段が求められます。その上で、このようなインフラをもとに幅広い関係者が連携し、デジタル時代に相応しいエコシステムの構築を進める必要があります。

 2020年に設立されたデジタル通貨フォーラムは、まさにこのような場となるべく、積極的な活動を続けています。日本を代表する100を超える企業や金融機関、自治体、有識者などが集まり、フォーラムが構築した円建てのデジタル通貨プラットフォーム「DCJPY」を礎として、オールジャパン体制の下でさまざまな課題の解決に取り組んでいます。2024年には、いよいよDCJPYを活用したデジタル通貨が現実に発行される予定であるなど、フォーラムの取り組みは着実に結実しつつあります。

 この間、世界でも、新しい技術を取り込むとともに価値が安定し、民間の力をフルに活かせる決済インフラの構築に向けた検討が進められています。この中で、民間銀行が債務として発行するデジタル預金(トークン化預金)が、その中核を担い得るものとして注目を集めています。デジタル技術革新が世界的に進む中、類似の問題意識に立った取り組みが先進各国で行われ、同様の解決策が見出されつつあることはフォーラムにとっても大変心強く、これらの取り組みとの連携も進めていきたいと考えています。
デジタル通貨フォーラムを通じた幅広い主体の協調とイノベーションの輪が、これからも広がっていくことを期待しています。

座長プロフィール

山岡 浩巳(やまおか ひろみ)
フューチャー株式会社 取締役 グループCSO  フューチャー経済金融研究所 所長
東京都チーフ国際金融フェロー
東京大学法学部卒、カリフォルニア大学バークレー校法律学大学院修了(修士)。ニューヨーク州弁護士。日本銀行において調査統計局景気分析グループ長、同企画室企画役、同金融機構局参事役大手銀行担当総括、金融市場局長、決済機構局長などを務める。この間、国際通貨基金日本理事代理、バーゼル銀行監督委員会委員なども歴任。

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