ディーカレットDCP

VOL.2
紙からデジタルがゴールではない。
デジタル通貨DCJPYで行政事務のDXとともに描く地域創生とは

前回は、デジタル通貨フォーラム行政事務分科会の活動や現在の行政事務が抱える課題について語っていただきました。後編は、行政がデジタル通貨DCJPYとともにもっとできることはあるのか、地域とともにできることとは、デジタル通貨DCJPYでサポートしたい未来像についてお話いただきます。

DCJPYを活用することで行政や地域にどう貢献できるのか?

ビジネスゾーンを活用して行政の事務を自動化し、業務効率化から施策間連携、データ利活用まで実現できる!

(左から)山岡座長、行政事務分科会幹事 木内氏、行政事務分科会幹事 高田氏

山岡 浩巳座長(以下、山岡):行政のDXは日本中の課題だけれども、これはデジタルで支払いができればそれで解決というものではなく、結局、行政事務全般のデジタル化が必要ということですね。
住民との紙のやり取りも含めてデジタルにできるところはデジタルに、それによって行政事務を効率化し、迅速化していかないと、デジタル化の効果は上がらないということかと思います。
DCJPYはキャッシュレス化だけではなく、情報処理のプラットフォームとして活用できます。したがって、行政事務全般をDCJPYを活用して効率化していく視点が重要になってきます。
一方でユニバーサルサービスとしての行政事務の性質を考えると、スマホを持たない人への対応として紙を完全になくすのは難しいという意見もあります。そのような中でも、デジタル通貨DCJPYネットワークを活用することのメリットやその意義について、ご意見を伺えないでしょうか?

木内 卓氏(以下、木内):PoCでクーポンや補助金の交付をやりましたけれども、この間電子マネーを使ったスマホベースでの地域通貨が普及してきて、「DCJPYじゃなくてもできるよね」というのはよく指摘されます。
一方で電子マネーの課題も出てきており、スマホを使って給付もお買い物もできるが、例えば施策間の連携ができない、 あるいは購買データだけでなく行動履歴も含めたデータの利活用、行政がクーポンや補助金の交付をしたあと、どこで使われたか、その先でどのように地域循環が行われたかをトレースしようとすると十分ではないことが明らかになっています。
それに対してDCJPYであれば、単にデジタルで給付や申請ができるというだけではなく、お金の流れがとらえられたり 施策間のデータ連携がはかれるようになります。
DCJPYじゃないとできない、DCJPYなら容易にできる、ということも見えてきているので、我々としてもそういったユースケースをどんどん出していきたいと考えています。

高田 守栄氏(以下、高田):デジタル通貨DCJPYネットワーク内で事業者が構築できるビジネスゾーン*には、課題解決に役立つ可能性を感じています。
ビジネスゾーンには申請・契約情報などの様々なトークンを付加することが出来ます。このトークンが行政の手続き・事務の中でお金と紐づきながら流れていくことで自動化できると考えています。

(出所)ディーカレットDCP White Paper2023

*ビジネスゾーン:DCJPYネットワークにおいて商流を担うブロックチェーン

(解説:De Beyondデジタル通貨入門メディア(未来を切り開く独自技術・デジタル通貨DCJPYで取引の常識が変わる!))

山岡:行政事務にDCJPYネットワークを活用することで、行政や地域などにさまざまな付加価値を創出できるのということだと思います。
行政事務の効率化についてもさまざまな可能性があり、例えば、災害の直後に現金代わりにDCJPYで給付を行えば、そのような時に人々が何を買うか、やっぱり乾電池や懐中電灯なのか、あるいは、「こんな意外なものも買っている」といった情報が入手できるかもしれません。
そうなると、災害時に人々が求めているものの供給を増やすことで、行政の効率性を高められるかもしれません。
あるいは、地域の総合アプリを作り、その中にDCJPYでの給付を機能として付加するとともに、他にも色々な機能を入れるというアイディアもあり得ます。この地域総合アプリには、地域行事から特産品に至るまで、細かな情報が全部入っており、そのアプリを1回インストールすれば、仮にそのあとに他の地域(例えば東京や海外など)に住むことがあっても、そのアプリを持ち続けてくれるかもしれません。
それにより、地域に関心を持ち続けていただき、地域の産品を買い続けてもらえるかもしれません。  ちょっと考えただけでも、行政や地域経済に対するいろいろな貢献ができそうな気がします。 DCJPYネットワークの活用を通じて、行政や地域に対してどういう貢献が考えられるのか、ご意見をいただければありがたいです。

デジタル通貨フォーラム 山岡 浩巳座長

木内:行政のDXと言ったときに、行政だけのデジタル化でも良いのですが、地域のDXと一体になってつなげる必要があるということもわかってきています。単に紙の申請手続きをデジタル化するだけではなく、地域全体でデジタルを活用して、自治体として地域を元気にしていく、でもそれを実現しようと思うと多くの自治体では組織が業務毎に縦割りとなっており、施策もそれぞれで行われるのでどうしてもシステム化する場合、システムがサイロ化しやすいということがあります。
先進的な自治体、例えば分科会に参加されている会津若松市や浜松市、熊本県などではデータ連携基盤を構築している地域があります。また住民のタッチポイントとしては、いわゆるスーパーアプリ、例えば粗大ごみや防災通知など様々な機能を一つのタッチポイントに集約し、1つのアプリで日常生活が済むという状況が出来るよう構想されていています。けれどもデータ連携基盤の上にスーパーアプリを提供してうまくワークさせようとすると、既存の技術でも実現可能ではあるけれども、システム間の連携を個々に作り込む必要があるため結構大変だろうと思います。

ですが、さきほど高田さんがおっしゃったように、コンソーシアム型のブロックチェーンネットワーク であるデジタル通貨DCJPYネットワークのビジネスゾーンを使えば、より簡単に、しかも安全に実現できる可能性があります。それは行政や地域に対しての貢献が非常に大きいと考えています。

高田:自治体職員と住民の接点である「申請のデジタル化」、さらにその後ろには自治体職員の業務が存在しています。 DCJPYのビジネスゾーンにデジタル申請のトークン情報が付加され、自治体・事業者間にある業務にも流れていく、このような循環型のユースケースが設計出来れば、自治体や地域に貢献できると考えています。行政事務分科会では、これを目指して取り組んでいきたいと思います。

行政事務分科会がDCJPYで描く行政事務の未来とは?

地理的な境界線は制約ではない。手続きや決済を意識せずにすむ未来を描きたい!

山岡:行政事務の未来に対し、行政事務分科会ではどのような貢献ができるのか、お聞かせいただければと思います。
最近話題のエストニアの電子政府では、外国人でもエストニアの住民になれる“e-residency”という制度がありますが、地域についても同じようなことが考えられるかもしれないと思います。
例えば、ある人が癒しを求めて離島や村に行き、その土地のファンになったという時に、その村の住民になれる総合的なアプリがあれば、アプリを通じてずっと村民でいることができ、村の催しや情報に常に接することもでき、支援をしたければ支援ができるといったつながりを作れることも考えられます。

高田:地域の活性化について考えると、その地域を訪れてファンになった人がその後もずっと支援してくれるというのは素晴らしいことだと思います。同様に、地域の総合アプリをインストールしている人はアプリで全て完結するため、市役所に行って手続きをしたことがなくても、その土地のファンであり続け、仮にその土地を離れていてもずっと市のファンで居続けることができます。市役所の事務についても、ほとんどの場合は市役所の窓口に来なくても事務が完結し、一旦市を出た人に対する情報還元も自動的に行われます。つまり、行政サービスを展開していく際に、地理的な境界線が必ずしも制約にならないことができると思います。データで繋がっていく世界が展望できるため、夢はいろいろと広がると思います。

行政事務分科会幹事 TOPPANエッジ株式会社 高田 守栄氏

山岡:今後DCJPYネットワークの活用により、これからの行政がどう変わり得るのか、ご見解をいただけるとありがたいです。

木内:まさにバーチャル市民ということで、物理的に住んでいなくとも自分がアイデンティティを感じている自治体や地域に対して、自分はここの市民です、自分はどこにいても会津若松市民です、気仙沼市民ですと言える。そしてバーチャル市民に対しても行政がサポートしていくことも考えられます。関係人口の創出、拡大はどこの自治体にとっても課題ですけれども、それがDCJPYを使うことで実現できると思います。
域外から域内へのお金の流れを促進することもできるだろうと思います。
東日本大震災の時は域外・県外に避難している方にどうやって緊急給付をするか、地域金融機関に口座を持っている人が県外で現金をおろせるよう苦心することもありましたが、現在はデジタル技術を使って簡便にできるようになります。
物理的・地理的な境界線を越えて、いろんなサービスが展開できるということで、可能性として大きいと思います。

行政事務分科会幹事 桜美林大学 木内 卓氏

高田:行政への手続き、お知らせ、決済が、スーパーアプリのなかでデジタル通貨DCJPYのネットワークを使いながら意識せずに高速に動いていく未来、そういう未来を願いながら、行政事務分科会で活動ができればと思っています。

木内:例えば引っ越したら転入・転出届をわざわざ出さなくとも住所変更がいつの間にかされている、あるいは子供が生まれたら医療機関のデータを基に出生届が自動的に登録されている、給付についても、世帯ごとの条件(何歳まで、年収いくら、子供何人など)があっても、自動的に制御されて届く、という仕組みだと非常に便利で嬉しいですよね。

山岡:今後行政事務分科会としては、どのような活動をしていきたいとお考えでしょうか。

木内:お話しながら考えていたのですが、DCJPYで実現できることは単に紙をデジタル化することだけではなく、もっとその先があるということがわかってきていると思います。 ホワイトペーパー のなかでも色々なユースケースの可能性が述べられていますが、我々もDCJPYのポテンシャルはまだまだある、まだ十分に引き出せていないと思っています。 夢物語のような話であっても「これもできるのでは?」というユースケースをたくさん出していきたい、もちろんそれらを実装することを目指していきたいと考えています。

高田:給付、納付の実証実験をいくつか行い、課題感や有用性は見えてきました。
今後は、もっと自治体職員の中でも事務方のサポートをできるようなユースケースを設計していきたいと考えています。
例えば、介護・福祉関連でもDCJPYの有用性に着目して活動を広げていきたいです。 介護・福祉関連の事業者・自治体が抱える課題にも取り組み、解決策を模索したいと考えています。課題整理や業務の複雑さに直面することもありますが、これからも行政事務分科会で取り組んでいきたいと考えています。

改めてDCJPYネットワークとは?

キャッシュレスが目的ではない?! 地域や行政はキャッスレスを超えた付加価値の塊!

山岡:お話をうかがってDCJPYは単なる決済プラットフォームではなく、デジタルアセットとデジタルトークン情報の連携を可能にするネットワーク であることをあらためて実感します。例えば、地域のお祭りのチケットや花火の映像などをトークン化し、これらを同じプラットフォーム上で決済と同期できる、そうした特徴をより活用し、あるいはアピールできないでしょうか。

木内:コンソーシアム型のブロックチェーンネットワークで解決できることはいっぱいある、スマートコントラクトを使って、またデジタルアセットを介在させることで、システム間・サービス間の連携やデータの利活用がもっと容易に安全にできる、というのがホワイトペーパーのメッセージだろうと思います。ビジネスと価値情報・銀行口座がつながっていて一体で処理できる、単に決済が同時にできますというだけではなくて、ビジネスゾーンの可能性をもっと追及していきたいですね。

高田:ビジネスゾーンの可能性を引き出せれば他のキャッシュレス手段との違いがはっきりわかると思います。

山岡:日本には既にキャッシュレス手段がたくさんあるので、これ以上キャッシュレス手段を増やす必要はないのではといった意見を伺うこともあります。しかし、DCJPYは単にキャッシュレス化を目指すものではなく、キャッシュレスの外側にも広範な付加価値を創り出すことが可能であり、その塊が地域であり行政だと痛感します。

木内:医療・介護や防災・交通など、行政は地域で様々なサービスを提供しています。住民IDと連携して個々の住民に対し最適なサービスをシームレスに不便なく提供する、この理想がDCJPYで実現できると期待しています。

山岡:地域の電力需要を平準化するとか、交通渋滞を解消するといった、「決済を超える」付加価値を創出できるということですね。

木内:火曜日にはこの病院の診療科にかかる人が多いから、それに合わせて火曜日に乗合いタクシーをこの地域に出そうなど、医療と交通といった領域をまたぐデータ連携により、パーソナライズされたサービスが提供できます。

高田:しかもそれがブロックチェーン上でしっかり安全に管理された状態で、お金が透明性をもって行政・市民・事業者の間を流れていく、ということでしょうか。

山岡:このような未来は夢物語ではなく、DCJPYネットワークの活用を通じて実現可能な未来であると考えます。 行政事務分科会での活動に、これからも期待しております。 今日は大変有意義な議論をありがとうございました。

都市部で生活をしていると意識する場面は少ないですが、確実に日本の人口は減っており、その中でも生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人に減少すると見込まれております。 「人手不足の解決策=DXして効率化」という図式は浮かびやすいですが、そもそも本当のDXとは何でしょうか。 人手がないのでレジを無くしてキャッシュレス化でもなく、紙に書かずにPDF化して送って終わりでもありません。 その裏で必要なデータが必要な場所と繋がる、それも意識せずにすべてが完結することが本当のDXではないでしょうか。 私達の生活を支えている行政事務において、意識せずにすべてが繋がり生活ができるというのは理想の未来だと思います。 行政事務分科会が描く未来は、この先の日本が求める未来です。 デジタル通貨フォーラムでは、行政事務分科会とともに行政事務の課題解決に積極的に取り組み、その検討結果を広く発信していきます。